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2006年12月13日

手宮洞窟保存館

 シーズンオフにこの国指定史跡の保存館に入ってみると、ここは秘境の空間である。手宮にある小樽交通記念公園沿いの道道454号線の山側の崖に張り付くように保存館があり、この日の最初の来館者として入ってみる。入館料は百円で、多分この種の施設としては全国最低の入館料ではなかろうかと推測する。

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 ボランティアの説明員がいて、暗くて広いとは言い難い館内のそれぞれの展示の案内をしてくれる。この史跡の説明を写真のようなディスプレイがあって、保存している洞窟の一部をバックに立体的映像表示で手宮洞窟の全体像の説明がなされている。大掛かりなディスプレイもない館内では、このディスプレイに注意を向けることができて効果的であると思えた。

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 お目当ての洞窟壁画はガラスケースの向こう側にある写真のものである。あらかじめ知識を得てから来ないと、これだけか、と失望感を持つ人も出て来そうである。洞窟と見学場所を仕切るガラス面のところにはパネルがあって、洞窟に刻まれた模様を模写したものがある。模写はパターン化されて、刻まれた形状が強調されていることもあって、確かに古代人の描いた絵か文字だと言われるとそうとも思える。しかし、洞窟壁面の実物にパネルのような模様があると言われると、なるほどそうか、といったところである。

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 この洞窟壁画は一八六六年(慶応二年)にこの辺りで小樽軟石を切り出していた時に石工の長兵衛により発見されている。一八七八年(明治十一年)に榎本武揚により学会で紹介され、その後専門家による調査や学会発表がなされて世に知られるようになり、一九二一年(大正十年)には国指定史跡となった経緯がある。

 調査研究が続けられ、この種の岩に彫られた絵(文字?)に類似のものがロシア極東部、中国、朝鮮半島に散在して発見されていて、この地域での文明の相関説がある。余市町にあるフゴッペ洞窟の壁画との類似性も指摘されている。しかし、この程度の壁画からでは、推論の範囲は制限されるだろう、と実物を見ながら思った。壁画にある形は杖を持ち、特別な頭飾りを身につけた人物、例えばシャーマンという説もあるけれど、想像を働かせればそんな説に行き着くか、といったところである。

 ただ、この洞窟は秘境の言葉とは相性がよい。来館者も居ないところで、暗い洞窟内の壁面に謎の模様が描かれている謎の模様と対面できて、秘境の空間の雰囲気を味わえた。

comments

小樽交通記念館に行った帰りに寄ったことあります。
自分は全く知識が無いまま行ったのですが、係員の方が丁寧に解説してくださり、とても貴重な遺跡であるということを知りました。
北海道の洞窟遺跡でもかなり昔のものであると伺っていましたが・・・。

  • げんぞう
  • 2007年01月22日 00:14
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