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2009年03月22日

あとがき

あとがき

 爪句集豆本も本書で五巻目になった。爪句作りを楽しんでいるよりは、豆本出版に精を出しているみたいなところがある。爪句を捻り出すのとは違って、豆本作りには色んな作業があり、それが揃わなければ豆本は日の目を見ない。
 爪句集豆本作りに桶作りの比喩を持ち出したい。桶は桶板が揃っていないと、一番背丈の低い桶板のところまでしか水は入らない。他の桶板に充分な高さがあっても、桶の水を入れる機能は一番低い桶板で決まってしまう。
 写真、爪句、豆本のデザイン等を桶板と考えると、そのうちのどれかのレベルに全体の評価が抑えられてしまうところがある。写真は良いけれど、爪句は凡作が並んでいる、単に写真集にしておいた方がよかったのに、なんていう声も聞こえてきそうである。
 桶板の間に隙間があってもここから水が漏れ出してしまう。隙間が空かないようにして、“たが”をしっかりはめる必要がある。“たが”をはめるのは、普通は編集者の役目なのだろうが、著者=編集者の状況の本書であれば、お互いの立場がぶつかって、“たが”がはまる状況は期待できない。精々出版を受け持つ担当者に、出版を早めるように著者が“たが”をはめることになる。
 この点、本書は3月中旬に原稿を出して、4月下旬には出版の見込みと聞いているので、これまでの豆本爪句集のように、原稿を出してから約3ヶ月後の出版と比べると、作業速度は大幅に改善されている。早く出版してほしい、とう著者の希望の“たが”が有効だったかな、と思っている。
 出版社の立場に立って考えると、もらった原稿をそのまま印刷するなら、印刷物としての納期は早まる。しかし、出版物を少しでも良いものにするため、原稿にも目を通して、修正点を拾い出す作業に時間が取られることになる。その担当者が仕事を抱え込む時期には、処理能力に限りがあり、さらに印刷が込み合う時期にはその分印刷工程で遅れがでる。
 豆本作りの作業に当たった共同文化社の担当者Nさんは、毎回豆本爪句集の原稿を読んで誤植等をみつけだし、著者の早く出版してほしいとの“たが”を意識して、今回の早い出版の実現に努めてくれた。この点Nさんにお礼申し上げる。出版に際して、その他の作業に関わった方々にも、これからもよろしく、とこの「あとがき」に書いておきたい。
 本書の「まえがき」に転載しているように、北海道新聞夕刊の文化欄に爪句に関する論評を書かせてもらった。これは文化部デスクのN氏の配慮であり、同氏にお世話になった点を記しておきたい。
豆本にする前に、原稿の一部は自分のブログに掲載している。この状況で、既刊の豆本爪句集は他のブログなどにも引用され、紹介してもらっている。ハンドルネームKさんやその他の方々から、ハンドバックに入れて持ち歩くのに豆本は便利であるとのコメントをいただき、豆本作りを思い立った最初の目的の一つが実現できていると意を強くしている。
 本書のテーマは札幌の四季で、主に2008~9年の一年間に、札幌を歩いて、自転車で、そして車で見て回って撮った写真と爪句で構成している。車の時には、運転は妻の役目である場合が多く、手当も支払らわれない運転手役を務めてくれた妻に感謝である。
 雪が解け、日の出が北に移動して、庭の木の葉の落ちた枝がほんの少し色づいてきているのを見ながら、この「あとがき」を書いている。書きながら、春の季節の到来を本爪句集の出来上がりと一緒に心待ちにしている。

2009年3月21日(三連休の中日に)
                       

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