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2022年01月07日

爪句集覚え書き-50集

 本爪句集シリーズは2008年1月1日出版の第1集から数えて、本集で50集目になった。第1集からほぼ13年経っているので、年に4集近くの割合で出版してきた事になる。各集には200を超す枚数の写真と爪句が収められているので、出版当初公言していた1万句(と写真)の制作が達成できた。
 第50集を出版するに当たって改めて「爪句」とは何かと考える。「爪句」は画像データ処理用語のサムネイル(thumb nail:親指の爪)に因んだ造語で、パソコン画面に“親指の爪”大に並べた写真画像のファイル名を5 7 5の句形式にし、その句を「爪句」と呼んでいる。その出自から爪句は写真のキャプションでもある。キャプションへ少し文芸的趣を持たせ、俳句の領域に近づけようとしている。こうなると本爪句集は句集ともいえる。
 17文字のキャプションだけでは写真を撮影した状況が説明できないだろうと、100文字強の説明文を加えている。その説明文も撮影時の感想を入れ込んで少しは読み物風にもしている。爪句集は毎日のブログ記事を編集していて、短文の日記文芸の感じを出そうとしている。この意図が上手く行けば爪句集は写真を主体にした日記形式の読み物ともいえる。
 これまで出版してきた爪句集はテーマ毎に作品をまとめていて、花、野鳥、植物、彫刻、鉄道、景観、行事、気象と多くのテーマの図鑑形式にもなっている。俳句と短文で読ませる図鑑といったところか。北海道の全駅を巡って撮影した全球パノラマ写真集にもなっており、俳句付鉄道ガイドブックでもある。もっと大風呂敷を広げると「爪句北海道百科事典」にも発展させ得るものだ。
 さて、文芸でも研究でも世間の認知度が仕事を発展させて行く上で影響してくる。足掛け14年間続けてきて50巻の爪句集を出版した“爪句”プロジェクトがどのくらい世間に認知されているかは、著者にしてみれば過敏なほどに気になる。著者からみても“爪句”の世間の認知度はかなり低い。写真とか俳句のように既成のカテゴリーにはまった趣味や仕事に対する世間の認知が高いのは当然である。しかし、写真(地上や空撮の全球パノラマ写真も含んで)・俳句・短文とキメラのような“爪句”やそれを記事にしたブログに興味を示す人はあまりいないようだ。
 これまで共著の形式での爪句集の出版も試みた。しかし、そこからの展開はなかった。豆本の爪句集の出版は、著者は面白いと思っていても、他の人には出版費用が高いハードルになっているのだろう。そのハードルを少しでもクリアしようと爪句集出版のためのクラウドファンディング(CF)を何回か行っている。しかし、見ず知らずの支援者はほとんどおらず、一般の大衆(クラウド)を巻き込む点では低調であった。
 自費出版では本の宣伝に限りがあり、前記CFのリターン(返礼品)に出版した爪句集を当てているけれど、もともと支援者の数が少ないので爪句集が拡散せず、この点も“爪句”の認知度を高めるのにCFはあまり貢献していない。捌けない全50巻の爪句集の在庫も山をなしてくる。こうなれば只での寄贈を考える。しかし、寄贈といっても受け入れてくれる図書館施設を探すのが大変である。
 写真撮影に始まって写真に対応する爪句の作句というカメラマンと作家の役、日々ブログに投稿し、ある時期に編集し、印刷会社へ渡して戻ってくる校正原稿を吟味する編集者の役、出版費用にいくばくか足しになるように行うCFも含んだ営業活動、最終的には爪句集寄贈という企業でいえば社会貢献的な役割等々を一人でこなしての全50巻の出版である。確かにこれは他人が真似するにはハードルの高いプロジェクトである。そのハードルを越えて来たのはやはり“爪句”が面白かったからである。
 第50集を出版したのを機に爪句を止めてしまえば世間から忘れ去られてしまう事柄なのか。それとも後に評価を得る事になる仕事だったのか、今の著者にはわからない。しかし、全50巻の爪句集出版の実績は北海道の出版史の隅ににおい記録に残される事になる、と希望的に思っている。

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