2023年03月24日
爪句集覚え書き-52集
爪句集は句集というよりは写真集である。特に本集を始め近年上梓している爪句集では、空撮パノラマ写真の天空部分に別撮りの写真を貼り付ける技法を開発し用いている。これは新しい写真法としての領域を広げるものであり、このような写真集としての爪句集は現在は広く知られていなくても、将来もっと評価を得るものだと著者は確信を持っている。
爪句集の写真は紙に印刷すれば1枚の写真に過ぎないけれど、インターネットを介してタブレットやスマホで360°のパノラマ写真展開が可能で、1枚の写真では納まり切らない情報を読者に伝える。これは又、紙に印刷された1枚の写真に多くの写真情報を記録させ得る方法でもあり、情報集約技法の上からも意味のあるものである。
さて話を出版経費に移す。これまで全51集の爪句集出版で出版費用が重荷になっている。この問題を少しでも解消しようと本爪句集もクラウドファンディング(CF)支援のもとに出版と爪句集寄贈のプロジェクトを行った。CFの支援を求めるためCF会社が公開するHPのURLを種々の方法で知らせる事になる。しかし、公開が終わった後でCFの公開内容をHPの数枚の写真として記録しておく事を考えると、1枚の空撮パノラマ写真に貼り付けておくのは有効な方法である。この覚え書きの文末にそのような例を載せておく。
空撮パノラマ写真をインターネットで検索するための方法としてはQRコードを利用する方法がある。ここで爪句の登場である。QRコードは画像データでありそのファイル名として、QRコードで検索される一連の天空貼付け写真の名前付けになっていると都合が良い。しかし、そのファイル名が「爪句集第52集出版のためのCFのHP画像」といったものでは味気ない。ここは句形式で「CFや 自分史出版 天に貼る」とでもすると読む人を惹きつける効果を出せる(と思っている)。
空撮パノラマ写真に貼り付ける別撮り写真は、ある野鳥の異なる角度から撮影したものとか散歩道で見つけた山野草等のテーマが決まっているものであれば、その内容に適した爪句は割合容易に作句できるだろう。しかし、その日に撮った別々の対象といったばらばらの写真を貼り付けている場合なら、一句で共通するものを見つけるのは工夫のしどころである。
話は飛躍するけれど、このような写真表現全体を俳句に対応して考えるなら、俳句における約束事「季語」の役割を爪句が果たしているとこじつけて考える事もできそうである。爪句集を写真集とするならば、写真の説明があれば爪句は必要が無いとの主張も理のあるところである。しかし、約束事として合成された1枚の写真、あるいはその写真をパノラマ表示にして見る手助けのQRコードに爪句をつけるという約束事は、俳句が5 7 5の音で構成され季語を含むという約束事と対応させて、写真を俳句にQRコードの爪句を季語にして考えてみるのも爪句のレゾンデートルになる。
技術の進歩は新しい表現方法を生み出す。本爪句集の場合の新しい技術とはドローンを飛ばしての空撮技術とパノラマ写真合成技術、QRコードを介してのインターネットによるパノラマ写真検索・表示技術である。技術が高度で複雑になるにつれ、俳句のように昔から変わることのない形式になぞらえて理解し説明したい衝動に駆られる事がある。爪句を俳句の季語で説明したいのも強いて言えばその辺りの事情から来ている。
空撮写真に別撮り写真をはめ込む技法の難点は現在のところ時間を要する点である。しかし、これは撮影した写真を使って新しい写真の作品を生み出す作業ともみなせる。その作業過程で時間が使われるのだと考えると、前述の難点は作品の制作時間という意味のあるものになり、その時間を無駄なものと考えずに楽しむ事ができる。一度制作した1枚の空撮写真に貼り合わせる組み写真を気分次第で後で変更することもでき、これは作品に手を加える作業ともなる。本爪句集に採録した写真の幾枚かはこのような作業を行った結果でもある。
- by 秘境探検隊長
- at 08:30
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