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2007年05月17日

北大忍路実験所

 忍路湾に面してある研究のためのこの実験施設は、北大北方生物圏フィールド科学センターに属している。1908年に北大水産学部の前身の東北帝国大学水産学科の付属施設として設立されている。

 この実験所は常駐の教職員が居ない。実験所に研究者や学生が泊り込みでやってくるのは夏場で、訪れた5月の半ばには実験所内には人影が無い。ただ、建物の前に車が止まっていて、管理人と予想される職員が来ているようである。予約も取っていなかったので、ここは名誉教授の肩書きを有効に利用しようかと、出て来た職員に名刺を渡し、いかにも研究者らしい振る舞いをする。

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 それが功を奏したかどうかは分からないけれど、実験所内を自由に見てまわれることになった。1階は実験室、標本室、器具の保管庫などに当てられ、二階が研究者の宿泊の部屋になっている。宿泊の定員は24名と聞いた。宿泊部屋には禁酒禁煙の貼紙がある。周囲に何もないこの宿泊施設では、研究者といえ若い学生なら飲酒を禁じられては、研究のための禁欲生活も大変そうである。禁煙の方は木造作りの施設なのでこれは必要だろう。

 実験室はガランとしていてこの時期机の上に器具も標本も無い。忍路湾内は強風でも波浪を生じない環境のため、無脊椎動物や魚類・海藻類の飼育実験に適していて、その標本を採取して研究が進められている。海水の測定やプランクトン採集も研究の主要なテーマであるそうだ。

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 標本室を覗いてみると、アルコール漬けになった海洋生物の標本が並んでいる。ウニとかヒトデ、ツブに名前が出てこない生物の標本が棚に並んでいる。生きたものを海の中でみると面白いものだろうが、アルコール漬け標本はどんなものを見ても気味悪さが先立つ。忍路湾はここからは木枠の窓ガラス越しに見ることができる。

 日本海の特徴としては干満の潮位差が少ないので、大きくもない忍路湾に漁船を係留しておける。船のみならず海水中で生きる海洋生物にとっても好都合であり、海水温が一年を通して5~22℃であることも手伝って、実験所は海洋生物を研究するに格好の地を得たことになる。

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 実験所の近くには国土地理院の忍路験潮場があり、海面の高さを自動計測している。山の高さでもcmのオーダーの海抜で示されているけれど、そもそも潮位は変動しているだろうから、その平均値で海面の高さを決めているのだろうか。いずれにせよ海面の高さのデータを計測しておくことは、地上の高さを確定するに必要であり、忍路湾にはそのような役目を担った施設があったことも始めて知った。

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