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2010年07月08日

爪句とは何か-その8

 これまで出版してきた爪句集豆本に「爪句とは何か」の解説を行ってきている。その解説6で、「爪句とは 写真散文 見出しなり」と書いている。これは、写真に加えて散文、つまり写真に関する文章があって、その文章の内容の見出しを5 7 5で表現したものを爪句と捉えることもできる、と解説している。今回は、爪句集でのこの散文について考えてみる。
 爪句集は写真集に重きを置くのか、それとも句集がその本質なのか、と問われると、的確に答えられない。そのどちらでもある、といったあいまいな答えしかない。それに、爪句集には200文字程度の文章、これを爪句文としておく、がつく。これは爪句集の写真、爪句と一体となって欠かせないものにしている。
 写真、爪句、爪句文と並べて、制作の難度を問われると、筆者の場合、この順番は逆となる。つまり、写真撮影が最も簡単で、爪句文を書くのが、一番頭と時間を使う。爪句の句作は、その中間に位置する難度となる。
 写真は思考作業の産物ではなく、感性に頼った画像の記録である。撮影の現場に行くまで時間がかかるとしても、現場ではカメラのシャッターを押す一瞬の行為があるだけで、文章における推敲作業のような、頭を使う作業が残ることはない。爪句の句作も、文芸性などとだいそれた事を考えなければ、5 7 5の単語の並びを適当に考えればよい。
 本爪句集の爪句文は200文字程度である。これは、最初は印刷のレイアウトから決まってきた経緯があるけれど、この文字数に後づけの理屈をつけたくなった。屁理屈には違いないのだけれど、200文字の根拠である。そこで、文字の作る空間(次元)というものを考えてみた。
 データの観点から、文章は1次元で、写真は2次元と表現される場合がある。文字を2次元空間に正方形に準じて並べて、文章を視覚的に表現することを考えてみる。2x2、3x3、4x4、5x5という字数で文章の音(文字)を格子状にして並べてみる。例として、「君・誰」「名前・何と・言うの」「お名前・漢字で・お書き・ください」「ご氏名は・空欄に・右詰めで・記入-お願いします」といったような視覚的文字の正方形を作ってみる。
 一般に、短い文章では、短いことばをつなげて終わる。文章の全体の文字空間が小さいと、文字空間の正方形の縦横が小さい。文章が長くなるほど、区切りの語句が長くなり、句の数が増える傾向にある。そこで、語句の区切り(爪句の5音、7音)の説明に要する文字空間として、正方形を仮定して、5音であれば5行、7音であれば7行の文字空間を考えて、この空間内に爪句文を納めてみることにする。
 つまり、爪句の5文字を5倍し、7文字を7倍したものを合わせた文章空間を仮定して、5x5+7x7+5x5=99(文字)で一句の爪句文の文字数にする。2句あればその2倍の200文字をもって爪句文の文字数にする。
 この文字数を割り出してくる根拠は、最初に書いたように何もない。文字空間など屁理屈である。しかし、屁理屈でも文章と写真のデータの次元に関連して、爪句文の文字数を200文字に合わすことができた点に満足している。
 最初の創作の難易度の話に戻ると、爪句制作の作業の順番は、まず写真が最初にくる。次に簡単な処理を考えて、爪句を作り、爪句だけでは説明の足りない部分を爪句文で補う、といった作業の流れになるだろう。しかし、爪句文を先に書いていくと、爪句は自ずと出てくるのも事実である。
 さらに、最初に写真ありきも、爪句文を書き、爪句を作っておいてから、それに合う写真を撮る制作過程も考えられる。漫然と写真を撮るより、爪句文の骨格が頭の中にあって、爪句の素案に添いながら写真を撮る方法である。こうなると、風景の切り取り方、強調したい部分、対象の組み合わせ方と、あらかじめシナリオに添った、考える写真撮影ということになり、爪句写真撮影の手法として進化させてよいテーマである。

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