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2014年03月12日

HPFhito56・奇跡の映画館「大黒座」の経営を続ける三上興行社長三上雅弘氏

 浦河町の文化的な施設で町外に知られるものがある。奇跡の映画館といわれる「大黒座」である。地方の町の映画館は全国的にほとんど無くなった。映画館の経営は人口10万人以上の都市でも大変だといわれているところで、浦河町の人口は1万3千人である。この町に映画館が今でも続いているのはやはり奇跡である。
 今回の浦河町行きの目的は、同町の池田拓町長のパノラマ写真撮影とインタビューであった。目的の仕事が終わり、帰りの列車の時刻まで時間があるので、小耳に挟んでいた大黒座に予約も無く行ってみる。日曜日の定時の上映前のごく短い時間に「大黒座」を経営する三上興行(株)社長三上雅弘氏にお会いする。
 予定にはなかったけれど急に思いついて三上氏のパノラマ写真の撮影をお願いする。座席数42の館内のステージの上に三上氏に立ってもらい撮影となる。館内にはすでに最初の客の姿がある。三上氏は客の対応と上映準備があるだろうと、気にしながらの短時間のインタビューになる。
 三上氏が生まれたのは1951年で、今年(2014年)63歳になる。映画館の方は1918年創業で映画館の年齢は95歳であるから三上氏よりはるかに年上である。「大黒座」と映画館より芝居小屋の名前のようであるけれど、実際創業当時は芝居も行われていた。三上氏は映画館主としては創業者から数えて4代目である。この映画館に関わってからは40年は経っているとのことである。映画館の建物は3代目である。
 当然ながら映画館の経営についての質問が口に出る。1日15人も入ればよいかな、というところで、客の居ない日もあるそうだ。映画もフィルムを映写機にかけるアナログ時代から、ハードディスクで送られてくる映像データを、パソコン制御の映写装置で映すデジタル時代に突入している。大黒座も昨年500万円の借金でデジタル映写機を導入したそうである。その借金を返すのは映画興行収入では到底無理である。
 人件費は捻出できないので三上氏の他は、映画興行のもう一方の推進者の奥さんの佳寿子さん、母親の雪子さんがスタッフでやっている。映画館を続けてこれた秘密は、三上氏のクリーニング店にある。クリーニング店の儲けを映画興行に注ぎ込んでいて、これで映画館の灯を消さずにやってきている。
 三上氏の個人的なことについて質問してみる。大学は和光大学で人文学部芸術学科を卒業している。池田町長も和光大学卒で、他にも同町には和光大学出が居るそうで、町内で和光大学の同窓会が開けそうである。三上氏はカメラの趣味や自転車に乗って楽しんでいるとの事である。
 慌ただしいインタビューを終えて映画館を辞する時、丁度前日(3月8日)に札幌で公演があった演劇集団REの「オリオン座最終興行」のチラシを手にした。チラシの写真は大黒座で、館名が写真合成でオリオン座になっている。脚本は多分大黒座を土台にしたものと予想できるけれど、観ていないのではっきりしたことはわからない。地方の小さな町の映画館が劇団員の心を惹きつけたのだろう。



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(大黒座のステージに立つ三上氏、2014・3・9)

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