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2018年08月27日

爪句集覚え書き―37集

 暦-カレンダーは1か月毎に構成ページが、1年毎に全体が捨てられていく。カレンダーの機能上当たり前の利用のされ方である。しかし、カレンダー写真の撮影者としては、口絵として印刷した写真を残しておきたい。その思いが本爪句集に結実している。
 カレンダー写真は、空撮も含め全球パノラマ写真を多く採用している。この写真は、タブレットやスマホでQRコードを読み込むことにより、表示画面に360°の全球写真を展開して見ることができる。このようなカレンダー写真を2015年から2018年の4年間分をまとめて編集したものが本爪句集である。
 カレンダーでは写真のみが印刷され、爪句や句作の状況のより詳しい説明の記述はない。そこで、本爪句集は従来の爪句集を踏襲して、採用した写真に関する詳しい説明と、写真のキャプションの位置づけの爪句を新しく創作している。
 この編集・創作作業を行う過程で、紙メディアの持つ制約に対処せざるをえない点を改めて確認した。紙メディアは2次元のデータしか表現できない。パノラマ写真を印刷する場合、3次元的写真から2次元写真を切り出す過程が必然的に入り込む。3次元空間をどのような視線で、どの部分を切り出すかは、往々にして最初には決まらない。
 一方、写真に付ける爪句に関しては、作句前に写真の説明という文章化作業がある。短い文章(100文字強)なので写真の対象や撮影状況についてあれこれ書くことは無理で、どこかに焦点を絞って文章化する。その文章をさらに簡潔に表現した文章の見出し(タイトル)の役目をするのが爪句である。もし文章が先に出来上がれば、それに沿って全球パノラマ写真から2次元写真の切り出しが行われる事になる。
 最初に写真があって作句が続くというのは、撮影した写真が変更できない通常の2次元写真の場合に多く、普通の処理の流れである。全球パノラマ写真のように、撮影後どの部分の2次元写真でも切り出せる場合は、爪句創作後に、第2段階目になる2次元写真確定処理と続く場合が多い。
 このように本爪句集で行われている処理作業は、写真撮影だけ、文章作成だけ、句を推敲するたけの枠がはめられたものではなく、異なるジャンルでの創作が互いに影響を及ぼしながら最終作品になる。ここに新しい創作の面白さや可能性があると考えている。
 手間のかかる処理で得られた全球パノラマ写真であれば、写真展でも開いて不特定多数の人に鑑賞してもらいたい気持ちが強い。しかし、写真展にはお金がかかる。その費用をカレンダー制作費に回し、カレンダーを配布すれば形を変えた写真展を行っていると考えることができる。QRコードを介してネットの世界とリンクすれば、通常の写真展とは異なる、全球パノラマ写真展を開催していることになる。
 現在、カレンダー出版の資金の一部をクラウドファンディングで得て、2019年の空撮全球カレンダー出版を行おうと準備している。本爪句集はそのリターン(返礼)品としての位置づけにある。この資金集めはいはば購買型のもので、カレンダーや爪句集が出る前に購読者を募集しているともいえる。ネット社会ではこのような仕組みを利用した自費出版が可能になっている。
 新しいジャンルでの作品の制作、出版、そして読者への販売と、可能性が眼前に広がっていると感じている。しかし、著者の試みの現状では、その可能性がカレンダー出版や本爪句集出版で充分実現されているとは言い難い。カレンダーの出版がこれからも続けられ、爪句集もシリーズの巻数をさらにのばすことができれば、この爪句考に述べたことが説得力のあるものになるだろうと思っている。

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