2006年12月08日
おたるみなと資料館
小樽港は北防波堤、南防波堤、島堤の三つの防波堤で港内と石狩湾が隔てられている。これらの防波堤のうち南防波堤は平磯岬が付け根部分となり、平磯岬に表記の資料館がある。ショッピングモールのウイングベイの海側を走る道路に沿って、平磯岬付近でカーブに差しかかる小樽寄りのところで、防波堤側に折れて行くとこの資料館に辿り着く。しかし、注意していないと見落としてしまう建物である。
この資料館は北海道開発局の小樽港湾事務所の建屋の一階部分にあり、無料で自由に見学ができる。十二月の最初の日曜日の午後に訪れてみたけれど、見学者は著者の他には居なかった。人の居ない点では秘境の必要条件をクリアしている。
この資料館は小樽港建設の歴史に関係する資料が展示されていて、小樽港ゆかりの人物の広井勇、伊藤長右衛門の小樽港築港に関わった足跡が展示されている。このうち広井は札幌農学校の二期生で新渡戸稲造、内村鑑三らと同期生で、一八八一年(明治十四年)に卒業している。卒業後一八八九年には札幌農学校教授に就任している。
一八九七年(明治三十年)に初代小樽築港事務所長となり、北防波堤の計画から施工まで従事している。このプロジェクトでセメントコンクリートの製造法や波力算定法を確立して築港上で貢献した。後に東大教授となり、橋梁工学でも一家を成している。
北防波堤が百年経た今もその役目を果たしているのをみると、百年前の土木技術が優れたものであることが分かる。しかし、防波堤に限らずダム、高速道路、ビルのような巨大コンクリート建造物の寿命はどのくらいなのだろうか。コンクリートもいずれは寿命が尽きるだろうから、今度は強制的に壊したり、取り除いたりする技術が要求されることになるのだろう。新しく造る技術から、壊し再生させる技術への技術変遷がどんどん進むと思われる。
資料館の傍から伸びている南防波堤では、釣りに興じる人が集まって釣り糸を垂れていた。これらの人の幾人がこの資料館を訪れているだろうか。資料館の近くに来ても資料館が素通りされるとなると、ここはやはり秘境の資料館と表現してもよいだろう。
- by 秘境探検隊長
- at 05:27
comments