Search


Archives

2007年01月10日

海宝楼

 閉校になった旧堺小学校の横を通り、堺町通に抜ける道沿いの少し高いところにこの建物がある。旧板谷邸であったものが現在はレストラン兼風呂の商業施設となっている。石蔵を利用した資料室もあり、小樽市の歴史的建造物の指定と組み合わせて、食事無し、入浴無しの観光客の見学のみにも対応している。

 旧堺小学校の取材のため、海宝楼の門の横から入れる、空いている駐車場に車を止める。この駐車場からは小樽の街をすぐ下に見下ろすことができ、坂道を降りたところに寿司屋の「多喜二」がある。冬場で海宝楼自慢の庭も殺風景である。ここは緑が豊かになって訪れると印象もまた違ったものになると思われる。

 車を駐車したことでもあり、秘境探検の番外編で、この建物の中を覗いていくことにする。冬場のオフシーズンであるせいか、客もほとんど居ない。大人千円の入館料を玄関先に置いてあるチケットの自動販売機で購入して邸内に入ってみる。

%E6%B5%B7%E5%AE%9D%E6%A5%BC%E9%96%80A.jpg

 この建物は一九二六年(大正十五年)から一九二七年(昭和二年)にかけて、戦前には日本有数の船会社を経営していた板谷家の私邸として建築されている。和風と洋風の建物がつながっていて、石蔵内が資料館になっている。頑丈な石蔵の扉から石蔵の内に入ると、古い小樽の写真や文献が並んでいる。 

%E6%B5%B7%E5%AE%9D%E6%A5%BC%E7%9F%B3%E8%94%B5A.jpg

 展示されている小樽のかつての栄華を誇る写真には、おたもい海岸にあった竜宮閣、手宮や入船町にあった遊郭のおいらん、百人は居る芸者衆の集合写真などが目に入る。女子学生のスキー姿の写真もあって、編み上げスキー靴、カンダハー、竹製ノストックは著者の若かった頃を思い出すと違和感はない。

 二階にはラッパ付きの蓄音機、ブリキ製のおもちゃ、年代物のアコーディオン、ランプ、箪笥といろいろ並べてある。それほど点数が多くはなく、資料のための資料館というよりは資料館の雰囲気を演出して石蔵内を見せようという方にウエイトが置かれているようである。

%E6%B5%B7%E5%AE%9D%E6%A5%BC%E7%9F%B3%E8%94%B5%E5%86%85%E9%83%A8A.jpg

 この建物から防空壕にも行くことができ、写真のレンガ造りの防空壕内にも入って見る。この防空壕がどのように使われたのかは傍に聞く人もいないので分からない。防空壕の内に宝船の模型が置かれてあって、使われなくなった空間にアクセントを持たせると同時に、平和な時代を演出している。

%E6%B5%B7%E5%AE%9D%E6%A5%BC%E9%98%B2%E7%A9%BA%E5%A3%95A.jpg

 海宝楼が無料で見学できるなら、これは秘境に組み入れてもよいかとは思ったけれど、入館料だけでも千円をとられるなら、秘境の候補からは外さなければならないだろう、と思っている。ただ、二千円(探検隊長+助手分)も払って見学したからには、ここを没原稿にするのもおしいような気もしている。

comments

comment form
comment form