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2007年05月18日

小樽北防波堤

 小樽は港の町である。港は船からの荷おろし、荷あげ作業が当然あって、港の岸壁に船を横づけにしてこれが行われる。しかし、岸壁が整備されていない時代や、遠浅で大型船が陸に近づけない場合はどうするか。艀(はしけ)を使うのである。艀は沖合いに停泊している大型船と陸地を結び、陸地には艀が近づいて荷おろしができるような港湾施設があればよい。小樽の運河はこの艀用にあったものである。

 艀が大型船に近づいて作業を行うためには、波の影響を少なくする必要があるので、防波堤が必要となる。小樽の港は防波堤と運河を組合わせて発達して来た港町である。岸壁のある港が整備されて来て、運河は本来の役目を終えて観光用に再利用されている。防波堤の方は本来の役目を果たしている。

 小樽港の防波堤は、コンクリートのブロックを用いて造られた北防波堤と、コンクリートの箱を作り、これを沖合いまで浮かせて運んでから沈めるケーソン方式の南防波堤で構成されている。北防波堤の方は11年の歳月をかけて1908年に完成しており、1280mの長さがある。この北防波堤は札幌農学校の二期生の廣井勇が日本初のコンクリートを用いた防波堤として設計して作りあげたもので、セイロン(現スリランカ)のコロンボ港の防波堤を参考にしたと言われている。この防波堤は土木学会の土木遺産や北海道遺産に指定されている。

 北防波堤の突端まで往復で約2.5km、徒歩で40分はかかるかと予想しながら堤防の上を歩いて行く。途中釣り人が釣り糸を垂れている。堤防からの海釣りは、川釣りのように竿を返さなくてもよいので、のんびりしたものである。何か釣れるかと寄り道するいとまもあらばこそ、どんどん歩いて行く。すると、堤防の途中で切れ目が入っていて、もうそこから向こう側には渡れない。考えてみると小樽港を外洋から遮るばかりで、海水の流れ道を作っておかないと、押し寄せる波の全圧力を堤防全体で受けることになる。

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 徒歩で行き着くことの出来る先端部から、小樽港、手宮の小高い丘、高島漁港の写真を撮る。天気は晴れているけれど、かすんでいて写真の遠景はくっきりと撮れてはいない。しかし、波も静かで、この防波堤の上で終日釣り糸を垂れて過ごす場所を提供しているとすれば、運河同様本来の目的から転用された役目が防波堤にあるとも感じられた。

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 百年近く経つっても建設当初の機能を果たしているこの防波堤は大したものである。しかし、老朽化に対する手入れは必要で2005年に改修工事が始まっている。小樽運河の端運河公園となっていて、公園内には北防波堤の生みの親の廣井勇博士の胸像が置かれている。

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