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2007年06月10日

小樽港でのケーソン造り

 小樽港の埠頭の縁を走り、国道5号線と合流する道路で平磯岬の南防波堤の付け根辺りを通過する時、海側に大きなクレーンが2基置かれているのを目にする。このクレーンはケーソン(caisson)を造る時に利用するものである。クレーンの下にはケーソン造成時に用いる台座の部分がある。

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 ケーソンとは防波堤を築くときに陸上や港内で造られるコンクリートの大きな箱である。鋼製のケーソンもあり、海を跨ぐ橋の橋脚などのため造られ、明石海峡大橋の主塔の基礎は鋼製である。その高さは65m、直径80mという巨大なものとなる。

 ケーソンは造られた場所から海上を曳航されて、目的地まで運ばれる。目的の場所でコンクリートの箱内には土砂が詰められ、海中に沈められ蓋で閉じられる。このケーソンが並べられ防波堤が造られる。

 最初小樽港の防波堤を造った工法は廣井進博士が採用したブロック工法で、ブロックを海中に斜めに積んで行く方法である。これは当時セイロン港を造る時に採用された方式で、イギリスからブロックを積んで行く機械タイタン号を持ち込んで防波堤を造って行った。その機械の説明と動く模型を、クレーンのある場所の隣にある「みなと資料館」の中で見ることができる。

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 廣井のブロック工法に対して、廣井の門下生にあたる伊藤長右衛門がケーソン工法を採用している。ケーソン工法はブロック工法に比べて単純で、ブロックをつなぎ止める必要もなく、手の込んだ技法を用いなくてもよい点優れている。しかし、大きなコンクリートの箱を造り、完成後に海に浮かべなければならない。伊藤は船の進水と同様に台座の上でコンクリートの箱を造り、これを傾け、石鹸で滑り易くした斜路にして海に進水させる方法を考えた。平らな台座で造られたケーソンをどうして傾けるかというと、台座を下で砂袋で支えておき、ケーソンが完成された時点で砂袋の砂を抜き取り、ケーソンを傾かせる。

 小樽港の防波堤は北方防波堤と南防波堤の一部がブロック工法、南防波堤の残り部分と島防波堤はケーソン工法で造られている。現在ほとんどの防波堤はケーソン工法で造られている。陸地でケーソンを作るのが難しい場合、浮き舟を利用して海上でケーソン造りが行われる。こうするとケーソンを進水させる必要もなくなる。小樽港に現役として残っている斜路を用いたケーソン造りの施設は全国でもここだけだろうと、たまたま居合わせた関係者から聞いた。

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 ケーソンは常時造られている訳ではないので、現時点ではケーソンを造る台座の部分とクレーンが、使われなくなった施設のように見える。しかし、これらの施設は現役である。資料館のパネルに写真が出ている、出来上がったケーソンの進水を一度見てみたいものだと思ったけれど、ケーソンを造る作業が行われていない現時点では、何年先のことになるか分からない。

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