2007年12月16日
人工着雪実験を見守る雪だるま
北海道のような冬に大量の雪が降る地方の電力会社の悩みの種に、雪による鉄塔の倒壊がある。降って来る雪を手のひらに受けてみて、この雪が鉄塔を倒すまでになるとは到底思えない。しかし、鉄塔や送電線に着雪した雪が融け、それがまた凍って成長していく着雪の重さは、見た目以上のものがある。鉄塔のみならず、建物だって同じ理屈でつぶれる場合がある。
送電線にへばりついた雪が落ちても鉄塔倒壊の原因となる。雪が落ちることで送電線は反跳して鉄塔間に張られた送電線が共振を起こし、この共振エネルギーを共振が小さなうちに放出できないと、鉄塔は増大しながら振動する送電線を支え切れなくなって倒壊する。雪が送電線から落下したとしても油断できないのである。
雪による鉄塔倒壊の対策としては、送電線に雪が着かないようにするのがよい。送電線にリング状のものを装着して、着雪が成長しない前にこのリングにより雪を落としてしまう方法もあり、これは実用化されている。送電線を捩ったような構造にして、着雪が起きないような形状にするのも検討されている。
降雪期に屋外で考案した送電線のモデルで着雪実験を行うのは天候に左右され、測定装置の設置とかの問題もありそうで、屋内で実験をしたいところである。しかも、年間を通しての実験でなければ研究も進まないだろう。そこで考えことは低温室での人工着雪実験である。多分、この研究所しか見ることのできない送電線の手作り人工着雪装置を見せてもらった。
ドアのところに「-15℃の雪と氷の体験」の文字を目にして、この部屋の中に入れてもらう。室内は実験は行われていないので、少し低めの室温かな、と感じる程度である。部屋の一方には捩った送電線の模型がおかれ、他方には人工着雪装置がある。実験ではこの人工着雪装置に雪を入れて、これを掻き出しながら送風機からの風で雪を吹き飛ばす仕組みになっている。吹き飛ばされた雪が送電線の模型に当たり着雪が起こる。
夏でも人工着雪実験を行うなら雪が必要で、実験室内に大きな冷蔵庫があって、内にはケースに詰まった雪が置かれてあった。冷蔵庫内で雪を見張るように少し融けかかった雪だるまが置かれている。この雪だるまは着雪実験の現場監督のようにも見えた。
- by 秘境探検隊長
- at 06:13
comments
こんにちは。ご無沙汰しています。Montrealのerijeです。10年程前の一月初めにMontrealでアイスストームがありました。マイナス15℃の気温で霙が降り出し、それが木や電線、鉄塔に着雪してそのまま氷の塊となって、その重みで木々は"バキバキ〟と音を立て折れ、電線も同様にその重みで切れて、至る所で火花をちらし、とうとう鉄塔までも倒れてしまうと言う大変なことがありました。そのあと起こったことは、Montreal市とその周辺が一斉に停電したのです!私はダウンタウンに住んでいたのですが4日間電気のない生活を強いられました。運良く我が家には暖炉があったので、それがない友人達は我が家に集まって来ていました。他の区域では復旧するまでに、長いところでは数週間というところもあり、残念なことに、寒さのあまり亡くなられたお年寄りの方々もいらっしゃいました。
erije様 私は20代の終わりから2年間ケベック市に住んでいて、時々モントリオールにも出かけていて、カナダの冬の生活を思い出しています。カナダの冬に電気が来ないのは大変なことだと想像できます。5年程前でしたか、夏でしたがカナダ東部で大停電があって、この時オタワに居て停電で予約していた飛行機が飛ばないので、バスでトロント近くのハミルトンという町に行った経験があります。カナダ、アメリカでは電力の自由化で料金を安くするあまりインフラへの投資が充分でなくて大停電が起こるのだ、といった論評が記憶にあります。