2011年02月10日
録音図書制作の現場
視覚障害者のために録音図書の制作がボランティア活動で行われている。そのようなボランティア活動を行っている団体から、拙著「風景印でめぐる札幌の秘境」の録音図書を制作していて、文中の語の読み方を電話で尋ねられたこともあって、録音図書制作の現場を見学させてもらった。
場所は地下鉄東西線の西18丁目駅の近くにある、札幌市視聴覚障がい者情報センターである。
視覚障害者がパソコンを利用するシステムについて見せてもらった。キーボードを打つと、そのキーの英数字を音声にした応答がある。かな漢字変換なら入力かなが発音される。同音の漢字選択の場合は、漢字の意味が音声で知らされる、それから選んでいく。ブラインドタッチ(本当にブラインドタッチである)で、音声を頼りにキー操作しながらキーボード入力を行っていく。
パソコン画面からのメニューを選ぶ場合は、カーソルをメニューの上で動かしていくと、カーソルの指すメニューが音声となって知らせてくれる。インターネットで検索する場合は、検索語を前述の方法で入力すると、検索結果が画面に表示される。検索結果の画面でカーソルを動かしていくと、カーソルが重なる検索項目が音声となって知らされる。これは合成音声によるスクリーンリーダーの技術で、画面の文字を自動的に音声に変換する技術を用いている。
点字に変換した読み取りも、パソコンに接続した点字出力装置で可能である。点字の基本単位は2x4のドットマトリックスで、ドット(圧覚)が有るか無いかで出来る異なるドットパターンにより、ひらがな、場合によっては漢字を表現し、これを指先で判別していく。
録音図書の制作は、読むための原稿チェック(校正)を行う人と読み手がペアになって行っていく。同センターにはスタジオがあり、100名以上登録されているボランティアの方々が交代でこの作業を行って、録音図書を作っている。前述の拙著の録音が行われていたスタジオを覗かせてもらった。
朗読者と一緒の録音ブースに入って、朗読が行われるのを聞いてみた。窓を通して、録音機器を操作しているボックス外の人が見える。
ボランティアの人は、一定の期間の研修を経て、作業のコツをマスターしてから録音図書の仕事に携わる。一般に本の著者はこのような録音図書になることを想定してはいないので、黙読で文章を書いているけれど、声に出して読まれると、思ってもいなかったことに気がつくことにもなる。原稿の校正を音読で行うのも、有効な方法であると気がついた。ただし、校正時にいちいち音読をするのも大変であると思った。
その他、録音図書を制作する裏話などを聞くことができ、こんな世界もあったかと認識を新たにした。
- by 秘境探検隊長
- at 02:50
comments
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視覚障害者のためにこの様な録音図書がボランテアの協力も得て制作されていることを始めて知りました。
私にとっては新鮮な都市秘境です。
先日の電子書籍化にも大いに関心が有りましたが、こちらの方は知らない間に、かくも進化していたのですね。
録音図書は花の四季のように、色彩に関わる秘境記事は視覚障害のある方々にとっては、夢のような世界を目の当たりにした素晴らしいプレゼントであったと思います。
爪句や秘境紹介シリーズが英訳されるとの、1人の秘境フアンの予測は、いよいよ現実味を帯びてきました。
私など、パソコンを操作しているとは言っても、今では正真正銘のブラインドタッチですから、さりげなくユーモラスに採り上げたブラインドタッチは、私にとってアキレス腱です。
最近の医療機器発達の恩恵を考えますと、一般に使われている健常者と言う言葉は限りなく死語に近づきつつあると思いました。
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先ほどのコメントにミスがありました。
私の場合は、格好の良い「ブラインドタッチ」ではなく、頭にNoが着く、格好の悪い「ノンブラインドタッチ」です。
最近の視覚障害者(施設名は障がい者と害の漢字をひらかなにして使用しています)用のパソコン機器の発達しているのは、実際に見ると驚きです。
しかし、私がもっと驚いたのは、この録音図書制作に携わるボランティアの希望者が多くて、多くの応募者から選抜されて無報酬で仕事をしている点です。交通費さえも支給されません。やはり年配者も居て、年金生活となると、遠いところから通う場合、交通費も馬鹿にはならないと思われるのに、それを自腹を切ってボランティア活動をしているのですから、生きがいにすると金銭的なことはかすんでしまうようです。
考えてみると、私も私設の勉強会や市の公式ブログ取材で、交通費も出ない状況で続けているので、まあ同じなのかもしれません。
健常者でも本を読むのが面倒で、誰かに読んでもらいたいという不精者には、録音図書は便利です。しかし、健常者が録音図書を借り出して利用することはできません。当然といえば当然なのですが、せっかくの無償の奉仕で作られた録音図書を、健常者が利用できないのも、少々納得がゆきません。