2013年12月15日
HPFhito23・「守・破・離」を説く北大情報科学研究科教授山本強先生
TEDxSapporoという、2013年に札幌で行われた日本語版TEDのプレゼンテーション・ショウで山本先生が説いていたのは「守・破・離」である。これは元々芸事や禅の教えにあるもので、「守」は従来からの形や教えを受け入れること、受け入れたものに工夫を加えて「破」っていくこと、そして教えられたことや自分の工夫からも「離」れて、新しいものを創りだしていくこと、といった意味がある。
山本先生は電子工学や情報工学の技術者としての才能を発揮し、大学院生だった1970年代半ば頃からマイクロコンピュータ(マイコン)の技術を自家薬籠中の物として、研究に応用し周囲にこの新しい技術の移転を行っていた。修士を修了して一度企業に就職後大学に戻り、超音波ホログラフィーのテーマで博士号を取得している。その研究にマイコン技術が生かされている。
山本先生の研究をトレースすると「離・破・守」かも知れない。新しく世に現れたマイコンというコンピュータ技術を身につけるやり方は、従来の大型コンピュータの世界から「離」れていて、独学の世界である。そこで身につけた技術や知見で、従来のコンピュータ技術の枠を「破」って新しい応用の展開を試みている。
マイコンからはCGの研究に移行し、日本では先駆的な研究者の一人でもある。CGの研究でも、最初は師に付いた訳でもなく従来の研究から「離」れて、試行錯誤でこの分野の研究常識の壁を「破」って来た。今や情報工学の応用分野での権威になっていて、「守」りに入った感がしないでもない。
山本先生や後輩の学生達がマイコン技術を核としてベンチャー企業を興し、後年「サッポロバレー」と全国に喧伝された、札幌や北海道の情報産業育成に貢献したことで筆者は2013年に北海道功労賞を受賞した。その記念誌発行にあたり、筆者の功績を紹介する長文の原稿は山本先生にお願いした。山本先生は、今や札幌という地方都市のIT産業史として定まってきている、マイコン産業勃興当時を顧みて執筆できる数少ない書き手の一人である。
執筆のお礼も兼ねて、山本先生を教授室に訪ねる。一昨年まで北大情報基盤センター長を、昨年からは産学連携本部副本部長を兼任していてかなり忙しそうである。短時間雑談で、電話のかかって来たのを潮にパノラマ写真を撮る。秘書の方も写り、色々なものが詰まった部屋の全部が写るパノラマ写真では、山本先生からクレームが届きそうである。クレームがあれば、もう少し舞台装置を整えたところでのパノラマ写真に差し替えるつもりである。
- by 秘境探検隊長
- at 18:31
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19日のeシルクロード第8期9講の演題が「タイと」云うことで、先般マダガスカルから急遽変更になった青木先生の「タイ」の紀行プログの余韻がまだ尾を引いており山本先生の「タイとの30年」に興味深々です。
拓銀の破綻に象徴される北海道経済混迷のさ中に、復興の牽引を担った若い経営者たちが北海道の情報産業の生みの親である青木先をコアとしてサッポロバレーを生誕形成した意義は何ものにも代え難く、北海道情報産業史編集委員会という任意団体がサッポロバレーに着目し名著として編纂した慧眼に深く敬意を表しております。
その名著「サッポロバレーの誕生」の中で、青木先生の冒頭の名文「情報ベンチャーが生まれた日」と末尾の「其れはマイコンから始まった」の山本先生の名文が思い出されます。
私の研究分野であるバイオの世界から見ると黎明期はおろか、見渡したところ、エンジエルは勿論、止まり木さえも見当たりません。
平成17年度北海道大学公開講座では[安心と安全の科学」をメインテーマに、第7回目に山本先生は[情報化社会の光と影」を講義されました。
内容は上記の[それはマイコンから始まった」とは打って変わった難解なものでした。
情報化社会に与えた陰の部分の一つが、コンピユーターウイルスでしたが、私の小著「ひまわりからの贈り物」の中では「ひまわり」を天然自然の創薬機能を備えた自然が創造した最高傑作と自画自賛しております。
ひまわりにも、ウイルスとしての「菌核病」や「灰色カビ病」に弱いなどのウイークポイントを避けられませんが、当時コンピユーターウイルスとして猛威を振るった[メリッサ」や[アイラブユー]などへの巨額な技術開発費に較べれば遙かに低廉である」と記述しており、今読み返してみて、クレオパトラ秘薬伝説を引き合いに出すまでも無く、バイオ産業も「IT産業」に比肩する前途洋たる分野と自負していた頃もあったとの追憶です。
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「バイオの世界から」の次に
「ひまわり分野」の6字を加筆し
「バイオの世界からひまわり分野を見ると」と、お願い致します。