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2018年12月06日

爪句集覚え書き―38集

爪句集覚え書き―38集

 文章は手紙にもあれば最近ならメール文もある。小説や研究論文も目的に合った文章で構成される。歌詞や俳句も文章のうちである。それぞれの文章は、より効果的に目的を果たすために、書き方とか約束事がある。手紙の書き方とか文章読本、俳句入門等と読むと為になるお手本がある。しかし、お手本を読まねば文章が書けないかと言えばそんな事はなく、伝えたい事、書き残したい事があれば、出来の良し悪しはさておいて、自分の言葉で文章を綴ればよい。
 さて爪句である。これは写真に付けられた短い文章である。写真も目的によって色々である。花や野鳥の観察の記録であったり、景色のすばらしさを伝えるものであったり、消えていく列車や駅を残そうとするものであったりする。すると、それにつける爪句は、写真を撮る目的に右倣え、のところがある。わずか17文字で季節感を季語に込めて、自分の感性を表現しようとする短詩の俳句とは、前述の説明にある爪句は異なっている。
 本爪句集は「クイズ・ツーリズム」のガイドブック(問題集)として編集されている。パノラマ写真に撮った場所がどこであるか、スマホやタブレットに360°視野の写真を展開して撮影場所を当ててもらい、インターネット上での疑似観光旅行をしてもらう事を想定している。写真に付けられた短文はクイズの設問文のようなものである。従って、爪句はその設問文の見出しの役目をしている。この状況では、爪句に場所を示す言葉を直接入れてしまうと、解答を先に示す事になり設問にならない。
 このような状況では、場所や状況を端的に17文字に表現する事から少し離れる必要がある。それでも写真の対象を説明しているように工夫する事も考えねばならない。対象に直に迫って感じた事を表現する俳句とは、文字数は同じでも全く別物である。この辺りに「爪句」と命名した17文字の俳句形式の融通無碍のところがある。しかし、俳句とは似て非なるもの、と考えた方がよい。
 クイズ・ツーリズムの問題集作成の立場からは、爪句の推敲に時間をかけたくない気持ちもある。設問のために言葉を並べる爪句と推敲を重ねる俳句の創作の差みたいなものである。本爪句集は爪句問題集であり、写真の場所のヒントにつながる爪句になっていればOKといった気持ちで作句している。問題集に採用した写真の点数も多い事から、対象の場所に関連する語句が頭に浮かんだら即17文字に閉じ込める、といった作業の結果が本爪句集となっている。
 クイズ・ツーリズムは、この方式が面白いと問題を解く事に時間を割いてくれる読者が居なければ、アイディアだけで終わってしまう。本爪句集の問題は、既に著者のブログに載せている写真に、爪句を含む設問文を新たに加えたものである。元のブログの「ここはどこ」のそっけない質問には解答のコメントを寄せる読者はほとんどいなかった。爪句と設問文を加えた効果があって、この問題集がそれなりに読者を捉える事ができれば、クイズ・ツーリズムの面白さを広めることができるかな、と期待もしている。
 観光旅行を考えてみると景観、温泉地、史跡・旧跡、人によっては山とか海等も現地を訪れて体験したい対象である。本爪句集はそういった広範囲の対象の全球パノラマ写真を基にした問題集の構成になっている。当初は鉄道に関するものも考えた。鉄道ファンの目に留まれば話題も広まるだろうと考えた。しかし、豆本では紙幅が足りない。鉄道に関する問題集は巻を改めて、と今回は見送った。クイズ・ツーリズム問題集の鉄道編を出版するかどうか、本爪句集の評価も関係すると考えている。
 本爪句集はクイズ・ツーリズムを広めるプロジェクトをクラウドファンディング(CF)で行っていて、の返礼品の位置づけでの出版でもある。このCFの成果は本爪句集の出版直前に判明する予定で、この「覚え書き」を書きながら好結果を期待している。

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