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2019年02月18日

爪句集覚え書き―39集

 最近のAIブームに乗って、AIで俳句を作る試みを耳にする。それも有り得るかと思う。ただ、俳句はできたとしても、評価の問題が残る。最初にテーマが決まっていて、それに副った作句ということになれば、人間の選者がテーマを最も良く表現していると感じた句に高得点を与える方法などが考えられる。
 爪句の場合、写真のファイル名としての5 7 5の17文字なので、評価がし易い事も考えられる。AIで作った爪句を写真と見比べて、写真の情景を上手く表現しているかどうかで評価を決める事ができそうだ。写真が加わった分、俳句より爪句の方が評価を出し易そうで、AI爪句は可能性が大きそうにも思える。
 AIの利用が急速に拡大して来ているのは、インターネットで、いわゆるビッグ・データを高速に検索できるようになった事情にもよっている。AI爪句も状況は同じで、過去の爪句データが多くなれば、それだけ評価に値するAI爪句が作れると言えそうである。
 本爪句集シリーズを始めた時点では、特段の理由もなく、大きな数字である1万句を目標に掲げた。爪句集1集につき200句あるので、50集で1万句に到達する。その目標の数字でAI爪句を考え始めると、1万句はAI爪句を成立させる十分な爪句データという視点が出て来た。爪句集出版の初期には考えていなかった事である。 
 一方、インターネット技術の発展で利用が拡大してきているスマート・スピーカーがある。AIスピーカーとも呼ばれている。AIスピーカーの技術では、利用者の質問の履歴が蓄積され学習効果が高まると、質問に対する応答が質問者の人柄を反映したものになってくる。これが進めば、AIスピーカーが利用者の人格を複製したようになり、質問者が自分自身と対話しているかのようになる。さらにこの考えを突き詰めていくと、生身の人間が死に、AIシステムだけが残った状況で、AIスピーカーに向かって話しかけると、故人が応えてくれるような錯覚を生み出せるだろう。死者がネット空間で生き長らえるのである
 さて、実験的に試みられているAI俳句は、人間とは別の機械(AI)が作句者になるという話で、このAI俳人が独特の感性や趣味を持った個性的存在ではない。これに対して、同一爪句(俳句)作家が作り出した大量の爪句を検索データにしたAI爪句は、元の作句者の個性を反映して生み出した作品になる可能性がある。
 具体的にどのようにしてAI爪句を作っていくのかは、現状では手探り状況である。ただ、いずれにせよ個性のあるAI爪句制作は、前述のように自作の爪句データを蓄積していく事が必要となる。本爪句集は毎日写真を撮り、爪句を付けたものを毎月17句選び、12か月で204句にして1冊の爪句集にしている。このような形式の“今日の一枚”の爪句集は2012年から本爪句集の2018年まで7年間続いてきた。そして2019年も続いている。
 その他のテーマの爪句集も合わせると、本爪句集39集と次の40集目が上梓を目前にしており、豆本にした8000句以上がネット空間に蓄積されている。豆本で出版せず、ネット空間に置いてあるだけの爪句データは、数えてはいないけれど、1万句を超しているだろう。AI爪句のデータの土台はできてきたのかな、と思っている。次の目標は実際にAI爪句を作ってみる事である。現時点で考えているように事が運ぶのかどうかは未だやってみないのでわからない。しかし、やってみる価値のある魅力的なテーマである。
 毎日写真を撮り、爪句を作句しその作品をネットに投稿するのが日課となっている。その日々の成果を豆本として出版を続けるのがライフワークのようになって来た。そのライフワークにAI爪句が加わると、ライフワークに重みが出てくるのでは、と思っている。

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