2021年10月17日
爪句集覚え書き-49集
本爪句集シリーズは、日々投稿しているブログの原稿を取捨選択して編集したものである。ブログ記事の対象は雑多で、写真に撮ってブログ記事が書けるものなら何でも、といった塩梅である。野鳥や動物、山野草や樹木、景観、建物、列車、天候、イベントとあらゆるものが爪句の対象である。当然これに人物も加わる。
人物は見知らぬ人を写真に撮ることはほとんどなく、何かの状況で見知った人を撮影している。従って、人物の写真を集めたこの爪句集は、写真を主体にした交遊録ともいえる。ただ、爪句集のスタイルは爪句17文字と1写真につき110文字の写真の説明文なので、どんな状況でその人を撮影したのか程度しか記述できない。その人となりをある程度説明するには文字数が足りない。
さらに野鳥とか花であれば年月が経ち個体が変わっても、個体を問題にしている訳ではないので、過去に撮影していても、同じ野鳥や花の名前で作句し説明が書ける。これに対して人物は社会における立場が変わっていく場合が多く、“ある日”の人は“別の日”には別の人になっている可能性がある。この状況で、同一人物でもその変化の経緯について説明し出すと短い文章では書ききれないし、爪句集ではそれを意図してもいない。
本爪句集では書名が示すように“ある日”に撮影され写真に残された“あの人”なのである。ただ、説明の文章が短い点を少しでも補おうと、単なるスナップ写真ではなく、その人がどんな場所にいるかを見ることのできる全球パノラマ写真で撮影出来た人物を選んでいる。全球パノラマ写真の1部を切り取った写真と並べて印刷してあるQRコードをスマホやタブレットで読み込むと、全球パノラマ写真中の人物として見ることができる。
しかし、このような全球パノラマ写真に撮影出来なかった人でも、交遊録的には残しておきたい方々もおられる。このようにスナップ写真しか残っていない方々については全球パノラマ写真と少しても整合性を持たせるため、後日撮影した空撮全球パノラマ写真の天空部分に貼り込んでみた。当然ながら人物を撮影した状況と空撮パノラマ写真には関連性は無い。
交遊録といってもあまりのも個人的なものでは爪句集にまとめても読者に見向きもされないだろう。この点道新文化センターの講座で訪問した「都市秘境」を冠してもよさそうな場所や、海外旅行の観光地での一コマ、イベントでの一場面等々でそれなりに読者の興味を引き出す写真を選んだつもりである。しかし、これは著者の意図が読者とはずれているかも知れない。
全球パノラマ写真で限られた紙幅の紙の本に、インターネットの技術を援用してページからはみ出してより多くのことを伝える形式の本は、交遊録を越えた本作りの可能性を拡大させるものだと考えている。例えば、QRコードを読み込んで再現した画像に又QRコードを入れ子のように描き込んでおくと、そのQRコードをさらに読み込んで幾層にもなる世界に入り込める。本爪句集でも2重程度のQRコードの入れ子構造を試してみている。
このような紙メディアとインターネットのハイブリッド形式の本に問題がない訳ではない。インターネットでアクセスするためのデータはどこかのサーバに保管されている必要があり、そのサーバの保守が滞れば全球パノラマ写真は見ることができない。この点に関して言えば、紙に印刷してしまえば本が残る限りその内容を読んだり見たりできる紙媒体の強靭さが証明される。
本爪句集を交遊録と位置付けると、よく顔を会わせる人でも、よく顔を会わせるが故に改めてパノラマ写真を撮る機会を逸していて、人物の距離感と比例して写真が採録されている訳でない点が気になる。その気になる点はあるにせよ、なるべく多くの人を爪句集に登場させようと試みた。写真は200枚を超していて、同一写真に何人か写ったものがあるから、多分300名を超す方々が爪句集に登場する。これはかなりの数であると思っている。
ただ本爪句集に登場した方々の多くは(ほとんどが)この爪句集の存在を知らないだろう。その点が心残りである。しかし、その分あまりにも私的な出版物になっていない点の救いになっている。
爪句集第49集出版と寄贈プロジェクトCF
https://find-h.jp/project/tsumeku-49/detail
- by 秘境探検隊長
- at 05:57
comments
ご無沙汰しております。急に寒くなりましたね。仙台もしかりです。
いよいよ新しい句集が出るのですね。おめでとうございます。
札幌から仙台に戻って8年になりますが、未だに札幌は大好きです。札幌で経験した様々なことが、今の私の生活に影響していると思っています。先生は私の好奇心の師なので、今までとは違う何かを見つけて進んで頂きたいと思っています。先生のサインを頂いた、私の風景印を集めたものは少しずつですが増えていますよ。
普段の年よりも早い冬の訪れの様ですので、ご自愛ください。
七島さん コメント有難うございます。札幌での生活は東日本大震災に関連しての事だったようなお話をぼんやりと記憶に残しています。本州では一雨一度Cの気温の低下が、この時期の北海道では十度Cの低下だそうで、現在その雨が降っています。紅葉の写真を撮りに行かねばと気持ちは少しあせり気味です。爪句集も初期の目的の50集出版を目前にして来年始めには完成に漕ぎつけたいと思っています。これが終われば終活の身辺の大整理を考えていて今からぼちぼち初めています。爪句集をもし51巻目を出版するとしたら「爪句@終活資料館」にしようと考えています。七島さんも向寒の折からご自愛ください。