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2008年07月29日

埋蔵物文化財復元の現場

 北海道埋蔵物文化財センターは野幌森林公園の北西の端に位置し、文京台小学校に隣接している。同センターのHPにある沿革によれば、1979年に発足し、1999年に北海道教育委員会の委託を受け埋蔵文化財の公開を開始したとあるので、これに合わせてこの建物が出来たらしく、新しい施設である。建物内は立派な造りで、一階ホール部分にパネルと発掘物の展示が並んでいて、奥まったところに事務室と思われる部屋がある。

 常設展と各種活動に利用される部屋はさらに奥まったところにあって、そこへの通路部の外側にはガラス越しに発掘現場を復元した展示を見ることができる。展示用に作られた巨大な黒曜石のやじりなどが目をひく。展示室には発掘された多くの土器や石器、木器が並べられている。子供たちに昔の生活に興味を持ってもらおうという意図で、発掘した生活用具を手にとって体験するコーナーなどもある。ただ、平日は見学者は少なさそうである。

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 展示に供されている復元された土器を見て、復元作業の現場を見たくなった。急な申し出であったけれど、別棟にある同センターの整理作業所を見学させてもらった。そこで目にしたものはジグソーパズルの作業である。まず出土した土器片を同じ土器のものと同定して、土器片のつながりを平面的に並べていく。

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 次に、これらの土器を立体的に再構成しながら組み立ててゆく。作業の途中では写真のようにテープで仮止めし、最終的には接着剤で固定する。当然欠けた部分が出てくるけれど、そこは補填して、もし土器に文様があれば補填部分の表面にも推定した文様を描く。

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 出土した土器の表面の文様も記録に残す。これは手書きで文様を一種図案化して描いてゆく。昔論文の図面制作で利用したロットリングペンを用いた作業が行われていて、懐かしいものを感じた。現在は図面書きはコンピュータによるところが多く、このような土器の復元作業でのコンピュータ利用を聞いてみる。答えは不可能に近いとのことである。やはり人間によるパターン認識と再構成能力に追いつく人工知能は現状では無理のようである。

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 廊下に積まれた土器片のボックスを見て、これは膨大な作業であると思った。これからも土木工事や建築工事が行われて、その都度遺跡が発見される可能性があり、持ち込まれる土器等の復元作業は終わりが無く続くように思われた。このような作業が毎日秘かに行われているこの作業現場は都市秘境に当てはまるものである。

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