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2010年12月30日

スリムな神狐の居る大覚寺豊川稲荷

 曹洞宗の大覚寺は狛犬が寺門を護っている。寺なのに神社を護る狛犬が控えているのは珍しい。しかし、この境内には豊川稲荷神社があって、神狐もいる。山門には仁王像があり、五百羅漢堂には500人の羅漢も居るから、何でもありの寺である。
 境内にある稲荷社は朱塗りの鳥居があり、豊川稲荷の額の架かった社殿の両脇に狐が控えている。狛犬を見慣れている目には、狐の身体はスリムに見える。さらにここの狐は面長の貌と長い首が強調されているので、余計にスリムな感じである。一方の狐は玉を加えている。狐の咥える最も一般的な物はこの宝玉である。狛犬でも玉を咥えるものがあるけれど、基本的には阿形の狛犬は口を大きく開けていなければならないので、玉を咥えては阿形にはなりにくい。この点、狐はしっかりと玉を咥えている。

大覚寺境内の豊川稲荷神社

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玉に似ず 咥(くわ)える口の 細長さ

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 他方の狐が咥えているものが判じ物である。この形から直接の連想は難しいところだけれど、これは鍵である。稲荷神は「稲生り」からの転訛と言われていて、元々は農業を司る神である。鍵は米蔵の鍵で、それが財産を蓄える蔵の鍵をも象徴するようになったらしい。鍵の先端の造作が壊れ、柄の部分が残って巻物を咥えた形になったのではないか、という説も読んだことがある。
 それにしてもこれら一対の狐は胴も細く、銅製の肌も滑らかで、稲荷社の狐の中でもモデル級のものではなかろうか。同寺の五百羅漢像が宣伝されて、見学者も羅漢像見学に流れるようであるけれど、羅漢像に優るとも劣らぬ鑑賞の対象である狐の方は忘れ去られているようである。

鍵あれど 開ける錠前 いずこなり

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 狐に目が行かなくとも、否が応でも境内で目につくのが山門の仁王像である。こちらは狛犬同様阿形と吽形の形に造られている。仁王像に紙礫がついているのは、参拝者が自分の身体の悪い部分と同じ仁王の身体の部分に、水を含ませた紙礫を命中させると、悪い部分が治るという言い伝えが広まったためである、と説明を受けたことがある。

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28日の御用納めで、都市秘境探検記も最終かなと思っておりましたが、何と今朝も桜に積もった雪を、春に満開の桜に見立てたり、狛犬の代役に賢い狐が登場するなど、秘境テーマには事欠かないにしても、もしも、私にもこのようなエネルギーと資質の1%もあれば(初夢で見れるかもしれません)今頃は小著「ひまわりからの贈り物」で蔵が建つか、少なくともDeath Valleyをうろうろする羽目には陥ちていなかった筈と遅まきの反省です。
今朝の道新に札幌市内47社もの神社の「お札の広告」が載っており、又、昨日の読売には旭川など道内主要都市の神社が「神社へ初詣」の広告が違和感なく載っており、現代日本人が先祖の開拓の辛苦へ抱く畏敬の念をDNAで受け継いでいる一面としか言いようが有りません。

  • 伊東 裕
  • 2010年12月30日 12:21

 新聞に神社の広告が出ていましたね。1年前には神社にはそれほど興味はなかったのに、神社の取材を続けているうちに、札幌の神社はほぼ全部巡りました。当然、新聞の広告に出ていた札幌の神社は全部行っています。元旦には大社ではなく、境内が無く、会館等の建物の内に祭壇だけがある神社の取材に行ってみようかと考えています。

  • 都市秘境作家
  • 2010年12月30日 12:58
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