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2013年12月14日

HPFhito22・“りゅうさん”に魅せられた福本工業社長福本義隆氏

 福本工業社長の福本義隆氏が文章入力で“りゅうさん”とパソコンに打ち込むと「劉さん」か「硫酸」かのどちらかが変換の第一候補と第二候補で出てくるとのことである。この二つの単語はまったく無関係と思われるけれど、福本氏の頭の中ではつながっている。
 「劉さん」とは中国人劉連仁さんのことで、中国山東省から1944年に日本に強制連行され、沼田町にあった明治工業昭和鉱業所で働かされた。終戦間際の1945年7月にここを脱出し、1958年2月に発見されるまで足掛け14年間を北海道の野山で生きながらえた人物である。雪で埋まる期間は地中に穴を掘り、そこでじっと座ったままで冬を越したというから奇跡に近い逃亡生存者であった。
 一方、福本氏は今やブームの感がある節電に挑戦している。太陽電池のパネルを自宅に取り付け、これから供給される電力だけで生活ができるかどうかを、身をもって試している。節電の最も効果的方法は電力を消費する生活と縁を切ればよい。冬は暗い穴倉のようなところで生活すれば電気はいらない。しかし、これでは精神が持たないだろう。
 という状況で、福本氏は劉さんの歴史的事実を知ることになる。自分とは比べものにならない無電気生活で北海道の冬を生き延びた先達が居る。これを考えれば、乏しい電気の生活は大した苦でもない。ここは一つ劉さんが働かされていた炭鉱のあった沼田町に行って、何か過去を振り返る資料でも探し、昭和鉱業所の跡でも訪ねてみよう。そして、それを省電力耐乏生活の精神的拠りどころしよう、と沼田町町役場まで劉さんの記録を求めて行く。
 沼田町役場で対応してくれたのは、町興しに熱心な町職員の亀谷良宏氏である。しかし、この負の遺産を調べ直すのは町としては乗り気ではなさそうである。それでも保管されている劉さん関係の新聞資料や昭和鉱業所の過去の写真などを見せてくれる。
亀谷氏は昭和鉱業所の跡に続く林道まで案内してくれたけれど、林道は閉鎖されていて、鉱業所の廃屋の写真を撮ることはできなかった。なお、この沼田町行きはイベント仕掛け人林克弘氏が沼田町に鉄道イベントの提案を行う目的もあって、林氏の車で行った。
 話しは戻り、福本氏の太陽光発電だけで一応最低限の文化的生活を行うには、大容量の蓄電池が必要との結論に達した。市販で手に入る蓄電池は停電に対処して大電流を放電するのもであって、少量の電流を長時間流す電池には不向きである。それも、夏季に蓄電して冬季に使うなどといった長期間にわたって働かせる目的のための蓄電池が必要だ、と福本氏は自作の電池開発に乗り出す。鉛電極を希硫酸につける鉛電池の原理から始まって、大容量鉛電池の自作と実験である。ここで登場する単語が「硫酸」なのである。この電池はまだ実験段階で所期の目的にはほど遠い。
 「劉さん」と「硫酸」は福本氏の頭の中では化学反応を起こしている。しかし、その化学反応はエコ生活、節電生活、老後の生きがい、といった触媒が作用したものである。今は手を引いているみたいであるけれど、福本氏はパノラマ写真に凝った時期がある。その衣鉢を受け継いだのが筆者である。


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(沼田町町役場会議室で左から福本氏、林氏、亀谷氏)

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私も11月12日の爪句[霜柱凍土の中の生のあり」に触発されて、早速ジュンク堂書店でこの本を求めました。
私の出身が深川市であることと、留萌鉄道の恵比島(テレビ番組の明日萌駅)から線路伝いで4キロ程の幌新に親戚があり、夏休みと冬休みには弟と毎年出かけておりましたから、話題の明治鉱業はその路線の終着駅でした。
深川の拓銀支店に10年間勤務の間、明治鉱業社員の退職金目当ての営業に何度か訪問しており、未開の周辺の様子は充分承知しており、事業所から脱出し13年間も穴から穴への過酷な生活に耐えた実録は驚嘆の極みです。
チョコのおとシャンこと福本氏が硫酸による鉛電池の開発を思い立ったのと同様に、わたしの場合は、13年間もの過酷な条件下での生命の維持についてです。
人は、水と何らかの植物系食品を得られればATP(生体のエネルギー通貨)を一日に体重の同じ位、ADPとの間で生成消費を繰り返し、体温を保ち生命を維持しているようです。
実録の中で、冬季間の食糧の備蓄調達は生易しいものでなく、今となっては著書だけでは植物名などの詳細な事実を知るすべもありませんが、今後とも大変参考になります。

  • 伊東 裕
  • 2013年12月14日 16:05

 今日のような雪を見ると、よくぞこの北海道の冬を、洞穴を掘って生き延びたものだと、信じられない気持ちになります。

  • ブログ子
  • 2013年12月14日 20:29
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