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2006年12月11日

川の博物館

 北海道開拓の歴史は石狩川治水の歴史でもある。この治水の歴史を見ることのできる博物館が、石狩市を突き抜ける国道231号線沿いの旧石狩川(現茨戸川)に面してある。
 石狩川の治水の柱として、河口近くで蛇行する石狩川の蛇行部分を切り離し、本流部分を直線状に改修し(ショートカットの方法で専門用語的には捷水路(しょうすいろ))、川の水を最短距離で石狩湾に流すことがある。この残された石狩川の蛇行部分が茨戸川となっていて、茨戸川は石狩湾とは石狩放水路でつながっている。

 石狩川に鮭が遡上し始めた9月の中旬の連休中日にこの川の博物館を訪れてみる。博物館のパーキング場は写真のように茨戸川の川べりにあって、茨戸川を間近にみることができる。パーキング場に止まっている車もなく、茨戸川を眺めてから、無料のこの博物館に入ってみる。予想したように館内には他に来館者は居ない。

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 館内には治水の歴史や石狩湾氾濫時の写真、河川工事に使われた測定器等の展示がある。石狩川の生態系や四季の変化の映像を見せるビデオもあって、誰も居ない館内でビデオのスイッチを入れてかなり長めのものを最後まで見る。子供達に石狩川を知ってもらうための教材といったところである。

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 この博物館の展示の目玉は、石狩川治水の祖岡崎文吉の業績である。岡崎は一八八七年(明治二十年)札幌農学校工学科に一期生として入学しており、北大工学部の前身で学んだことになる。卒業後北海道庁の技師となっている。しかし、この人の名前を聞くのは初めてであった。もっとも、岡崎は土木工学の人であるので、専門が同じ技術者には良く知られた人なのかも知れない。岡崎の論文、著書、辞令などがガラスケースの中に展示されていて、岡崎その人の博物館のようである。

 岡崎は一九一五年(大正四年)には「治水」を丸善から出版しており、この著作は土木学会の「近代土木文化遺産としての名著100選」に選ばれている。岡崎の治水思想の集大成といわれている。治水事業は単に川のみを見るのではなく、山林を始め河川を取り巻く環境、その保全のための行政等に目を向ける必要があると言及しているとのことである。

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 川の博物の前には道路を挟んで風力発電の風車がゆっくりと回っていた。海から蒸発した水が地上に降り、石狩川の水となりそれを用いて電気を起こす一方で、河水が海に還る海岸付近では、海からの風で電力を得ようとするようになって来ている。この水と風に関わる技術の対照が、川の博物館と風車を並べて見比べて、印象深かった。

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