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2006年12月20日

森ヒロコ・スタシス美術館

 小樽の緑地区に沿って走る道道956号線沿いにこの美術館がある。小樽ではよく知られた私設美術館で、入館料も設定されているので都会の秘境の定義の範疇からはみ出す。しかし、館名にある銅版画家の森ヒロコ氏と館長の長谷川洋行氏を知っている関係で、秘境の取材を行った。

 最初この建物と出会った時、写真のように石蔵に美術館の看板が出ていて、美術館と石蔵の取り合わせの妙を感じた。加えて、看板に「NDA画廊」の文字を見つけて、この画廊が十五年以上も前に札幌にあった時、著者の作品をこの画廊に並べて行った「コンピュータグラフィックスホログラムとスケッチ展」を思い出した。

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 美術館の正面には館名にあるポーランドを代表するアーティストのスタシス・エイドリゲヴィチウス氏がこの美術館を訪れた時に描いていった、赤い人物とStasysのサインがある。開館日は週末に設定されているので、土曜日の開館時間に合わせて入館すると、好都合なことに森ヒロコ先生がおられ、館内を案内してもらった。

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 館内に入ると一階のフロアーにポーランドのユゼフ・ヴィルコン氏の廃材で作った動物のオブジェが置かれている。ユーモラスで素朴な犬やコンドルの置物で、森先生が気に入ってヴィルコン氏に頼み込んで美術館の所蔵品にしたそうである。ヴィルコン氏の猫の自画像も一緒に展示されている。

 美術館はバス通りに面した部分と、奥にある石蔵をつないで建てられていて、石蔵内の美術館には森先生、スタシスの作品の他にチェコスロバキアのアルビン・ブルノフスキーの作品が展示されている。石蔵内の美術館の様子を写した写真の隅にブルノフスキーの肖像写真が見えるが、この天才的芸術家は一九九七年に亡くなっている。

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 森先生の銅版画のお好みのモチーフは猫で、著者も何点か森先生の作品を所蔵している。銅版画に関しては、札幌芸術の森で市民相手の夏休みの講習会が開かれた時に通って、西安で描いた兵馬俑のスケッチを銅版画に仕上げた経験があるので少しは知識がある。スケッチを銅版の上に写して、ニードルでなぞって行く。ニードルで傷のついた部分をさらに腐食させ、この部分にインクが入り込むようにする。最終的にはインクを塗った銅版に紙をあて、プレス機で銅版に描かれたものを紙に写し取る。なかなか手の込んだ作業となる。

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 森先生の居間で話し込んでいると、外出先から館長の長谷川氏が戻られた。氏からは、スロバキア国立オペラを毎年日本に招待して公演を行う興行師としての話を聞いた。その話は、一般には知られていない逸話に満ちていて秘境的であった。二〇〇七年の年明けは「カルメン」が演目だそうで、オペラとはこれまで縁が無かったけれど、この美術館見学の縁で札幌講演のチケットを買い求めた。

 この取材記をブログに投稿しようと準備していると、このオペラ公演に関する記事が長谷川氏の顔写真とともに新聞に掲載されているのを目にした。


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