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2014年01月01日

HPFhito36・北海道新聞文化賞に輝く初音ミク

 2012年度の北海道新聞文化賞は画期的なものであった。実在の人物ではなくヴァーチャルなキャラクター(ボーカロイド)が著名人や団体と伍して受賞している。受賞対象の団体や会社は法人とも呼ばれ、こちらも法で認められた架空の人格とはいえ、建物があったりそこで働いている社員が居たりで、実在のものである。これに対して、初音ミクはコンピュータ内やネット空間に存在するアイドルなのである。
 文化賞推薦に当たり、初音ミクを生み出したクリプトン・フューチャー・メディア社の伊藤博之社長を受賞対象と考えて打診した。伊藤社長からは、自分より初音ミクを推薦してほしいとの意向が返ってくる。この申し出にはかなり戸惑った。いくらなんでも実在しない人物に賞とは、推薦規定を見ても受賞対象は個人とか団体とかは書かれていても、「実在」のという断りはない。改めて書くまでもなく、賞の対象は実在するものとは暗黙の了解事項である。
 この推薦は門前払いだろうと思いながら2011年に推薦書を送った。案の定この年は受賞には至らならなかった。受賞にならなかった理由など審査内容は一切外部に漏れてこないので、実在人物でないのが受賞に届かなかったのかどうかを知る術がない。
 前年の経験があるので、2012年に推薦を再提出するかどうか迷ったことも事実である。しかし、推薦書を大幅に書き換える必要もないので、ダメモトで2年目の書類提出である。これが認められ、初音ミクは道新文化賞初のヴァーチャルキャラクターの受賞に輝いた。賞のカテゴリーは特別賞である。
 ホテルで行われた授賞式にはパノラマ写真にある初音ミクの等身大のパネルが受賞者の席に置かれた。表彰状や故佐藤忠良氏作のブロンズ像が贈られるのだが、これは初音ミクが受け取ることができない。スケジュールの関係で都合のつかなかった伊藤社長に代わって、同社の社員が代理で受け取っていた。
 受賞祝賀会の席で小耳に挟んだのだが、選考過程でやはりヴァーチャルな人物に賞を与えることには議論があったようである。しかし、初音ミクの全国的な、そしていまやアジア的な知名度の持ち主である点が受賞を決定つけたようである。
 授賞から1年以上も経ってから、受賞式に出席した初音ミクにクリプトン・フューチャー・メディア社の応接室に立ってもらいパノラマ写真撮影である。受賞式でもらったブロンズ像を一緒に並べてもらうのを失念したので、それは筆者の自宅にあるものを重ねて写真に収めた。「ジーンズ」と題されたこのブロンズ像は2012年を持って贈呈は終わったようで、2013年からは新しく安田侃氏の石彫が賞として贈呈されている。


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