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2020年09月30日

爪句集覚え書き―45集

 道内のあちらこちらに出向いてパノラマ写真データを撮っても直ぐに処理する時間が無く、データのままにしてフォルダーに残しておくものがかなりある。旅行から月日が経ち、必要になってパノラマ写真に合成してみると、日時だけの記録ではどこで撮ったのか記憶がはっきりせず、場所の同定に時間を費やす事がある。このような経験が本爪句集のテーマであるクイズ・ツーリズムにつながっている。
 写真の撮影日は記録してあり、その日のおおまかな行動のメモもある。写真の撮影時刻も読み出せる。しかし、その時間にどこで撮影したかは詳細にメモしていない。そこで処理したパノラマ写真から場所の同定作業となる。八雲の辺りで撮影した船揚場の写真から場所の同定作業の例を取り上げてみる。
 同定には八雲の海岸の場所の分かる写真が必要で、これをネットで拾い出して撮影場所と比べる作業は時間と根気がいるだろうし、普通は困難である。この点Coogle Mapの衛星写真を利用する手があり便利になったものである。写真撮影の時刻が早朝なので、宿泊ホテル(八雲遊楽亭)の近くだろうと見当をつける。Google Mapでホテル近くの揚船場らしい場所を探し出す。自分で撮った全球パノラマ写真を回転させ、衛星写真に写っている構造物と対応させて場所を確認する。この例では陸揚げされた2艘の船まで一致している。
 この同定作業では写真を撮影した時には気にも留めなかった事柄を、旅行後何年かして調べな直している。改めてその場をパソコンを利用して旅行しているみたいである。撮影場所の同定というクイズを解くため、実際には見ていなかった場所も調べてみる事になり、新たな仮想旅行を行っていると言ってもよい。
 あいまい情報でも自分の記憶の断片が場所同定のヒントになっている。本爪句集のテーマである駅のクイズ・ツーリズムでは、このヒントの提示の仕方で容易な問題にも難問にもなる。いずれの場合にせよ問題として出された駅を全球パノラマ写真を頼りに同定しようとする作業は、その駅に関してより理解を深めることになるのは間違いがない。
 この覚え書きを書いているとき、コロナ禍が収まる見通しが立っていない。にもかかわらず「Go To トラベル」のキャンペーンも始まっている。会合で3密を避けるためにon lineの利用が拡大している。クイズ・ツーリズムはwithコロナの時代に合っているかもしれない。実際の旅行を自粛する代わりにネットを利用してクイズに解答する知的好奇心を満足させながらの疑似列車の旅を楽しめる。ただし「Go To」の目的とする消費行動にはつながらない点があるので、withコロナ時代の消極的鉄道観光旅行ともいえる。
 それにしても北海道の路線と駅はどんどん消えていっている。本爪句集に問題として取り上げた駅でも既に廃駅となってしまったものや、列車が通過する事もなく廃線、廃駅を待つばかりのものもある。クイズでの駅巡りはもう存在しない駅巡りになっている場合もある。空間軸を移動しての謎解きが時間軸の移動になっているかもしれない。年月が経てば本爪句集の駅当てがますます困難なものになるだろうと、爪句集出版前から予想している。



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(画面クリックでパノラマ写真)
幸漁丸 船名も読み 揚船場


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(Google Mapから)

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