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2024年01月02日

爪句集覚え書き-54集

 爪句は写真のキャプションである、との考え方が固まって来ている。キャプションなら5 7 5の俳句形式にしなくてもよいのでは、との考え方もある。キャプションのための句作に時間が取られて、それに見合うメリットがあるのか、という疑問も頭をもたげる。実際、写真のキャプションなら説明を手短に書いた方が楽である。
 にもかかわらず俳句形式にこだわるの、数千枚を超える膨大な数の写真の整理のためには、何らかの形式を制約として用いる方が後々便利なためである。実際この爪句集で54集を数えるまでになってくると、写真(爪句)枚数は優に1万を超す。この数の写真の検索、編集、爪句集出版では形式(制約)を設けないと収拾がつかなくなってくる恐れがある。
 形式を整えておくと、毎日少しずつブログに投稿し、投稿原稿がある数になれば、それを編集して爪句集の原稿にするのに都合がよい。ただ同じ対象の写真であれば異なるキャプションを付けるのは工夫が必要である。本爪句集は日々の日の出の写真を撮っていて、同じような日の出の写真だと「日の出〇月〇日」と通し番号にしておけば済むが、爪句形式では異なる表現を用いる必要がある。
 本爪句集の空撮写真にはその日の別撮り写真を、日の出写真の天空部分に貼りつける工夫を取り入れている。こうする事により、貼りつけられた写真を爪句を詠む対象にすると、同じ爪句が並ぶ事を回避できる。しかし、この写真技法は写真処理に時間を要する難点がある。その難点はあるにせよ1枚の空撮写真に複数枚の写真をはめ込む面白さもある。
 写真法の観点からは、本爪句集で採用されている天空貼り込み写真は新しい写真技法のジャンルの展開を示唆している。スチール写真の整理や記録の上からも有効である。例えばその日に撮影した野鳥を天空に貼り付け、まとめた1枚の写真に爪句を付けておくと、個々の野鳥についてのキャプション(爪句)を省くことができる。
 日常の写真についても同様なことが言える。その日の時間の流れの中で撮った写真を貼りつけておくと写真日記として残しておくことができる。何枚もの写真から取捨選択した写真を貼りつける事で、後で見返す時に素材の似たような写真を改めて見る必要もなくなる。ただ、このような写真法はネット利用を前提にしており、爪句集に印刷しておいてもネット環境が変われば(例えばサーバーのサービスが無くなったりすれば)本来の疑似3次元の写真ではなくなる。このような不安定な要素はあるものの、本爪句集に採用している「空撮日記」法は(少なくとも著者には)魅力ある写真記録法である。
 著者は探鳥散歩と称して自宅の近くを散歩して野鳥の写真を撮り「空撮日記」の原稿にしている。野鳥は出遭える日もあれば全く姿を見かけない日もある。野鳥の写真が撮れた状況を魚釣りの「釣果」をもじって「鳥果」の造語で表現している。野鳥の写真が撮れなかった場合には「鳥果を得ず」となる。
 空撮写真は天気が悪ければドローンを飛ばせないけれど、そうでなければ飛行させたドローンが自動的に記録した写真データを、パソコンのソフトで自動的に処理して空撮写真に完成させている。従って、カメラを手にして撮った写真とは異なり、撮り手の技量はほとんど問題にはならない。天空部分に写真を貼りつける処理の過程での工夫が、写真再構成のセンスの有無を決めている程度である。しかし、手間のかかる写真再構成にあまり時間を取られないようにしている。
 写真技法から離れて、ドローンの操縦技量は当然問題になる。強風への対応、冬場であれば低気温によるバッテリーの電圧低下、ドローンの電池切れ等々に対処せねばならず、カメラの操作とは別の技量を要求される。ドローンの飛行許可・承認申請の手続きもある。本爪句集での空撮は多く自宅庭上空で行っており、札幌の自宅は人口密集地に分類され、ここでのドローン飛行は「無人航空機の飛行に係る許可・承認書」(東空運第23917号及び330085号)を国交省(東京航空局長)から得て行っている。
 造語「爪句」は世間にほとんど認知されていないだろう。爪句のキャプションの写真技法を楽しむ人も仕事に利用するプロの人も現在はほんの一握りだろう。しかし、この造語を作り出し、写真法を編み出した当人としては将来の展開を期待している。そのためには著者一人であっても続ける事が大切で、「継続は力なり」で新分野を切り開いていく馬力にしたいと思っている。

        数年ぶりに初日の出をドローンで拝めた辰年元旦に
                       2024年1月1日

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