2014年11月30日
HPFhito88・若き日に「日高のケネディ」と呼ばれた新ひだか町長酒井芳秀氏
新ひだか町の役場の応接室で同町の酒井芳秀氏にお会いし、パノラマ写真撮影後インタビューとなる。酒井町長は2004年に旧静内町長に選ばれ、現在の新しい町名の町長となって三期目を務めている。
新ひだか町は、旧静内町と旧三石町が合併して2006年に現在の町になり、役場は旧静内町の建物を引き継いでいる。この合併時には隣町の新冠町も加えた合併構想があり、もし三町が一緒になると日高管内唯一の市への昇格ができ、日高町があっても現在の町名から「新」を除いて市名として「日高市」あるいは「ひだか市」とする案があったと酒井町長から伺った。しかし、この目論見は、新冠町が合併に加わらなかったので町名から市名への変更は立ち消え状態である。しかし、町名変更の底流は続いていると酒井町長が漏らしていた。
酒井氏は1944年三石の歌笛の生まれで、インタビュー時には70歳である。浦河高校と北大を卒業しており筆者の後輩にあたる。しかし、かなりの後輩と思っていたら、年齢は3歳しか違わない。その訳はインタビューの話から納得する。
酒井氏の生家は「酒井建設」の会社経営を行っていて、酒井氏は同社の後継者と目されて育った。高校卒業後東海大学に入学する。しかし、相模原にある同大に入学してみると土地柄が合わず、その他のこともあり半年ほどで退学する。退学後一念発起で札幌の予備校に入学し、北大を目指す。しかし、最初の北大入試には失敗し、予備校を変えて翌年1965年に北大に合格する。実質2浪したことになり、このタイムラグが影響して、筆者よりかなり後輩だと思っていた。
北大では土木工学科に進み、1969年の卒業後は父親の跡を継ぐべく酒井建設に専務として入社する。入社後は日高管内で主に橋梁建設現場で仕事をし、この間推されて自民党の日高支部の役職にも就く。この頃アメリカではJ.F.ケネディが大統領に就任し、彼への憧れが政治の舞台で活躍する素地を作っている。政治家になってからは「日高のケネディ」のニックネームで呼ばれることにもなった。
34歳の時に転機が訪れる。道議会の日高管内選出の自民党の長老議員が辞めるという意向を受けて選挙に出ることを決意する。会社は弟に任せての転身である。しかし、辞める予定だった長老議員が方針変更で再出馬したため、この時の道議選で酒井氏は次点で落選する。
捲土重来で4年後の道議選を目指して選挙区内を回り、8,9割方の戸別訪問を達成する。その甲斐もあって、1983年道議初当選となる。この時38歳であった。道議会の議員で活動し、2001年に道議会議長に選出され、議長職にあった2003年に議長職を辞任し知事選に出馬する。
この知事選は、3期目を目指していた堀達也知事が自民党の北海道選出の大物国会議員の意向で身を引くことになり、この国会議員が官僚出身の知事候補を推挙してきたことに酒井氏が反発し、酒井氏自らが知事選の候補として名乗りを上げる。勿論自民党員としての立候補するつもりであったところ、前記の自民党候補と票が割れることを恐れた自民党が酒井氏を除名することになる。結果として、無所属で出馬した酒井氏は知事選で敗れた。この辺の事情については当事者として語っても語り尽くせないこともあるようだが、過去の話でもあるとふっ切れた様子も伺えた。
知事選敗北後、2004年に選挙地盤であった旧静内町の町長選があり、2期目に入る現職の静内町長を破って当選する。現職を相手に当選できたのは、過去に築いた選挙地盤が強固であったためだと本人自らの解説である。
政治家としての仕上げは合併後の新ひだか町の発展に尽くすことで、まずは産業振興である。現在軽種馬の生産が30億円規模で、続いて黒毛和牛が14億円、ミニトマト8億円、デリフィニュームの花卉栽培7億円等と数字が口から出てくる。最近の町長は政治家に加えて経営者のセンスが求められるようである。
パノラマ写真にも写っている「涼夏少雪の郷」は酒井町長が捻り出した言葉で、町を売り込む言葉にしている。軽種馬の産地の町長ということもあって馬主でもあり、忙しい公務の合間に競馬の観戦に行くこともある。他に趣味を聞いてみると、音楽だそうで、高校ではクラリネットやドラムの奏者から指揮者の役に転向し、持っていたクラリネットを手放して手にしたレコードで、音楽鑑賞は今でも続く趣味とのことである。
議会の合間の昼食時を利用しての駆け足インタビューである。帰り際に、未だ見たことにない同町の観光名所「二十間道路桜並木」を、来年はパノラマ写真撮影で訪れると酒井町長と約束して役場を後にした。
(新ひだか町応接室での酒井芳秀町長)
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- by 秘境探検隊長
- at 15:07
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