2008年07月31日
酪農学園大学バイオガス発電
酪農学園大学の酪農に関する先端技術研究基地としてインテリジェント牛舎がある。同大学のほぼ中央に位置する中央館の屋上から123 haの広さのある構内を見渡すと、国道12号線から距離を置いて国道に沿ってこの牛舎群を眺めることができる。
国道から牛舎の方向に入る入口のところにコンクリートの高い門があって、最初この門の意味など考えもしなかったけれど、学内案内図には「狭き門」と記されていて、これはマタイの福音書にある「汝狭き門より入れ云々」の言葉からきているようである。道の先には希望の塔と名づけられて建屋があり、この大学の建学時の精神のベースにキリスト教があり、それを物語っている。現在でも教授会は祈りから始まるそうである。
話をインテリジェント牛舎に戻すと、自動搾乳システム牛舎、フリーストール牛舎やミルキングパーラーと並んで乳牛糞尿循環センターというのがある。名前だけならどんな機能を持った施設なのか分からない。しかし、バイオガス発電と言われるとほぼ察しがつく。牛の糞尿を集めて発酵させ、バイオガス(メタンガス)を取り出してこれを燃焼させて発電を行う施設である。
牛舎内でサルネモラ菌が見つかって、一般の見学が制限されているところを頼み込んで装置を見せてもらうことにする。ビニールの靴カバーをして消毒液に漬けからインテリジェント牛舎が並んだ場所に入る。バイオガス装置のある建屋に入ると、大きなタンクが目に入る。ここに牛の糞尿が地下の配管から運び込まれ、攪拌しながら発酵させメタンガスと液状肥料に分けていく。発酵タンクの容積は250㎥である。発酵タンクにはガラスの覗き窓があって、メタンガスが発酵している様子が観察できるようになっている。バイオガスから分離された液肥の方は肥料として使われ、よい肥料になるそうである。目の先にあった液肥の臭いはほとんどしなかった。
発生したメタンガスで発電機を回して発電する。発電機はガスタービンとガスエンジンの方式がある。ガスエンジンは自動車のエンジンを思い浮かべると様子が想像でき、ガソリンの代わりにメタンガスで発電機を回している構造である。ということは、メタンガスをボンベに詰めて自動車エンジンの燃料にすることもできるということで、大学外でその実用化の実験が行われている。
発電の状態は建屋の入口のところのホワイトボードに表示されていて、見学時には約280kwhと記されていた。得られた電気は大学構内で使用されている。発電量の監視等は制御室のモニター用PCで行われる。見学時には制御室には誰も居らず、プラント設置当初はトラブル続きであったものが、現在は安定した稼動で常時監視する必要もなくなったそうである。酪農を研究にしている大学で牛の糞尿で発電が行われているのは秘境のテーマにふさわしい。