食のブランドは口コミから始まるところがある。食と口コミとなるとおかあさん達である。ここに目をつけた江別市が第1回サンデー&サタデーマーケット「かぁーさん江別ブランド 手作り品大集合!」という企画を2007年12月に実行した。普段はほとんど訪れる人もいない河川防災ステーションの活性化も念頭に、江別産の食材や食品を並べた。
この直売会で主役を務めていたのが「巴農場」の“かぁーさん”達であった。マーケットには巴農場で生産されたものや、加工された食品が並んでいる。その中に巴農場産のトマトケチャップがあった。瓶詰めにされていて、トマトのキャラクターが記憶に残っていた。春になり巴農場の風景写真を撮りながら自転車で走っていると、壁にこのケチャップのマークが壁に表示してあるプレハブがあった。ここが手作りケチャップ農家と分かったので、夏になって改めて出向いてみる。
突然の訪問に対応してくれたのは、はるちゃんのトマトケチャップ代表の岡村恵子さんである。ケチャップの手作りを行っているプレハブ横に、トマト栽培のビニールハウスがある。トマトケチャップ用に育成を試験的に行っているというシシリアンルージュとかサンマルチーノの品種が収穫前の青い小さな実をつけている。
トマトケチャップはトマトの収穫後に煮込んで、リンゴ、玉ねぎ、ニンニク、生姜などを入れて作るそうである。生食で美味しく感じるトマトは糖度が高い反面、水分も多く煮詰める過程で果肉の目減りが大きい。この点ケチャップ加工用トマトは生食には適していないけれど、煮込んだ時の果肉の歩留まりがよく、過熱によりグルタミン酸、リコビン酸が増加する。さらにリンゴを加えることで甘味や酸味が増し、βカロチンが一般のケチャップの3倍程度までになる。ケチャップの赤さが鮮やかになる利点もある。
ここで、リンゴを加えるのが食品のカテゴリー表示との関係で問題を指摘されたそうである。つまり、トマトケチャップとはトマトだけに少量の香辛料に相当するのを加えたものという定義があり、リンゴを加えたものをトマトケチャップとして表示・販売する点で問題ありと指摘があった。江別のブランドとして年毎に倍増の売れ行きになると、指摘の点にも対応せねばならず、今年(2008年)からは「はるちゃんのケチャップ」で「トマト」を除いた新しいラベルを作成して貼る方針である。
昨年度で瓶詰めを2000本以上を作ったとのことで、瓶のキャップも熱した状態で手作業で行う。手作りも人気が出て大量生産になって行くと大変なことであり、江別の食のブランドはこの大変さの上に成り立っている。