視覚障害者のために録音図書の制作がボランティア活動で行われている。そのようなボランティア活動を行っている団体から、拙著「風景印でめぐる札幌の秘境」の録音図書を制作していて、文中の語の読み方を電話で尋ねられたこともあって、録音図書制作の現場を見学させてもらった。
場所は地下鉄東西線の西18丁目駅の近くにある、札幌市視聴覚障がい者情報センターである。
視覚障害者がパソコンを利用するシステムについて見せてもらった。キーボードを打つと、そのキーの英数字を音声にした応答がある。かな漢字変換なら入力かなが発音される。同音の漢字選択の場合は、漢字の意味が音声で知らされる、それから選んでいく。ブラインドタッチ(本当にブラインドタッチである)で、音声を頼りにキー操作しながらキーボード入力を行っていく。
パソコン画面からのメニューを選ぶ場合は、カーソルをメニューの上で動かしていくと、カーソルの指すメニューが音声となって知らせてくれる。インターネットで検索する場合は、検索語を前述の方法で入力すると、検索結果が画面に表示される。検索結果の画面でカーソルを動かしていくと、カーソルが重なる検索項目が音声となって知らされる。これは合成音声によるスクリーンリーダーの技術で、画面の文字を自動的に音声に変換する技術を用いている。
点字に変換した読み取りも、パソコンに接続した点字出力装置で可能である。点字の基本単位は2x4のドットマトリックスで、ドット(圧覚)が有るか無いかで出来る異なるドットパターンにより、ひらがな、場合によっては漢字を表現し、これを指先で判別していく。
録音図書の制作は、読むための原稿チェック(校正)を行う人と読み手がペアになって行っていく。同センターにはスタジオがあり、100名以上登録されているボランティアの方々が交代でこの作業を行って、録音図書を作っている。前述の拙著の録音が行われていたスタジオを覗かせてもらった。
朗読者と一緒の録音ブースに入って、朗読が行われるのを聞いてみた。窓を通して、録音機器を操作しているボックス外の人が見える。
ボランティアの人は、一定の期間の研修を経て、作業のコツをマスターしてから録音図書の仕事に携わる。一般に本の著者はこのような録音図書になることを想定してはいないので、黙読で文章を書いているけれど、声に出して読まれると、思ってもいなかったことに気がつくことにもなる。原稿の校正を音読で行うのも、有効な方法であると気がついた。ただし、校正時にいちいち音読をするのも大変であると思った。
その他、録音図書を制作する裏話などを聞くことができ、こんな世界もあったかと認識を新たにした。